神は舞い降りた


3月6日。翌日は移動日となるため、マイアミ滞在の事実上の最終日です。楽しい時間は、飛ぶように過ぎてしまうものですね。もう明日には日本に帰らないといけないのか……ずっとマイアミに留まって、シーズン終了までヒートを応援できたらどれほど幸せだろうか……。

おっと、感傷的になっている場合ではありませんでしたね。たしかに明日には日本へ帰らないといけませんが、その前に今回の観戦旅行で最大の戦いが控えています。今季NBA最高勝率を誇るサクラメント・キングスをホームに迎える一戦! ヒートが圧倒的不利と考えるのが普通でしょうが、勝負はやってみないと分かりません。ここでキングスを叩いて、プレイオフ争いへ向けて勢いをつけたいところです。この試合はESPNで全米中継もされますし、うまくいけば応援ボードを掲げる私の姿が映されるかもしれません。(笑)

さて、例によって試合開始までは特に予定がありませんが、マイアミ滞在最後の日なのでお土産を買い込んでおかないといけません。今日も試合まではベイサイドをぶらぶらすることになりそうです。

↓1週間お世話になったベイサイドとも、あと1日でお別れと思うと寂しい限りです。




とりあえず、外出の準備をしながら何気なくESPNのニュースを見ていたら、おもしろいCMがやっていました。ナイキのCMなんですが、登場するスポーツ選手の様子が何やらおかしい……。有名アスリートが多数登場するのですが、彼らがプレイしているのは「本業」とは違うスポーツ。テニスのアンドレ・アガシがレッドソックスのユニフォームを着て野球をしているかと思えば、NFLファルコンズのマイケル・ヴィックはアイスホッケーをプレイしています。ほかにも、MLBダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンがボーリング、ツール・ド・フランスの伝説的選手のランス・アームストロングがボクシング、女子陸上のマリオン・ジョーンズが体操、女子テニスのセリーナ・ウィリアムスがビーチバレーを、それぞれプレイしています。そして最後に一言、「This guy can do anything.」 なかなかユニークなCMでした。特に個人的にツボだったのが、ボーリングをするランディ・ジョンソン。真面目な顔でボールを投げる姿が似合い過ぎ!(笑)

その後、土産物を探しながらベイサイド内をうろうろしていたら、100円ショップならぬ1ドルショップを発見。キーホルダーなどの土産物からサングラスやビーチサンダル、さらにお菓子やジュースなどなど、いろんなものが売ってました。もっと早く見つけていれば、他のお土産も全部ここで買ったのに。(笑) とりあえず、キーホルダーをどっさり買い込んで、お土産購入は終了しました。

さて……そろそろ決戦の時間が近づいてきたようです。今回の観戦旅行の最後を飾る大一番、キングス戦に向けていざ出陣! 例によって開場の1時間前に会場に到着しましたが、今回は土曜日のデーゲーム、しかも相手がキングスとあって、開場前に並んでいる人の数は過去2試合の3倍ぐらいはいそうです。




観戦も3試合目ということで、慣れた足取りで会場内へ。今回の座席は、チームベンチとは反対側の10列目になります。ただ、この日は開場が10分遅れたため、入場した時点で既に個人のシュート練習に残っていたのはカロンのみ。結局、ブライアンのサインは貰えずじまいでした。うーん、残念。

↓今日も最後までシュート練習を続けるカロンとアスキンスAC。左側からパスを出しているのはエリック・スポールストラAC。




ところで、試合前のシュート練習を見ていたら、懐かしい顔を見かけました。元ヒートのロドニー・ビュフォード。ヒートファンでも覚えている人は少ないかもしれませんが、1999年のドラフト2巡目53位でヒートに指名された選手です。ヒート在籍は1シーズンだけでしたが、今はキングスに所属していたとは知りませんでした。

さて、そうこうしているうちにシュート練習も終わり、両チームのスターター紹介に。いつもどおり、アウェイチームの選手の名前が適当に(笑)読み上げられた後、場内が暗くなってムービーが流れ、ヒートの選手が紹介されます。いよいよ、観戦旅行最後にして最大の戦いの火ぶたが切られようとしています。うおー、燃えてきたぞ!

↓燃えてます。(笑)




この日のキングスのスターターは、マイク・ビビー、ダグ・クリスティー、ペジャ・ストヤコビッチ、クリス・ウェバー、ブラディ・ディバッツの5人。ウェバーが復帰したことでブラッド・ミラーがベンチスタートという、なんとも羨ましいばかりの選手層の厚さです。また、渡米時点では故障者リストに入っていたボビー・ジャクソンも復帰したようです。一方のヒートのスターターはこの日も変わらず、レイファー・オルストン、エディー・ジョーンズ、カロン・バトラー、ラマー・オドム、ブライアン・グラントの5人です。




第1Q、立ち上がりからオドムが快調に得点を重ねますが、その他のメンバーは不調でシュートが決まりません。ヒートの得点のほとんどをオドムが決めているという印象です。一方、今季の1試合平均得点がNBA1位のキングスもシュートが決まりません。この日は序盤から接戦の展開が続き、23−23で第1Qが終了。オドムは第1Qだけで15得点をあげました。

↓オドムのアイソレーションから攻めるヒート。この日はこのパターンが何度も見られました。




第2Qに入るとキングスのシュートが決まり始めますが、ヒートもオドムを中心に応戦し、試合は一進一退の攻防が続きます。それにしても、キングスのオフェンスはNBA1位の得点力を誇るだけあって、すごく組織化されているという印象を受けます。1つのプレイを取ってみても、一体何回スクリーンをセットしているのかというほど……。ヒートもハーフコートオフェンスを得意とするチームですが、キングスはトランジションゲームでも無類の強さを誇るところが凄いですねぇ。ハーフコートオフェンスに偏ってFG成功率が悪いヒートの試合を見慣れているだけに、キングスのオフェンスを見ていると羨ましくて溜め息がでます……。

↓タイムアウト中に言葉を交わすカロンとユドニス。




第2Q後半になると、徐々にヒートが点差を広げていきます。オドムは相変わらず好調を維持し、ヒートのリードは一時13点に。しかし、ヒートはFTの失敗が目立ち、それ以上リードを広げられません。第2Q終盤にはターンオーバーから速攻を許して点差は一桁になり、48−39で前半が終了。オドムが前半だけで21得点をあげている一方で、EJとグラントが無得点なのが気になります。過去2試合も同じような展開で追いつかれていますし、今回は相手がキングスなのでなおさら油断はできません。キングスのオフェンスを見ていると、追いつかれるのが時間の問題のようにさえ思えてしまいます。

↓ハーフタイム中にシュート練習するキングスの選手達。




↓会場には人気ラッパーのファット・ジョー(中央のスキンヘッド)の姿も。スクリーンに映し出されたので探してみたところ、ヒートベンチのすぐ隣に座っていました。




さて、ハーフタイムも終わって後半戦へ。過去2試合はいずれも、前半に奪ったリードを後半開始早々に追いつかれるというパターンだったので、同じ轍は踏みたくないところ……でしたが、いきなりキングスに10−0のランを食らい、あっさりと逆転を許してしまいました。いやいや、早すぎやろ。(苦笑) 時間の問題どころの話ではありませんでした……。

過去2試合と全く同じ試合展開、しかも今回は相手がキングスなので、このまま一気に引き離されてしまうのか……と思いましたが、ヒートも粘りを見せ、試合は一進一退の展開に。オドムは得点だけでなくリバウンドでも存在感を示し、オルストンとラスールの活躍も目立ちます。特にラスールは、ルーキーだった昨季に比べて、ミドルレンジからのジャンパーやスリーポイントの上達が著しいです。さらに、過去2試合ではあまり目立たなかったユドニスもインサイドで頑張りを見せ、第3Q終了時点でスコアは69−69の同点に。13点差を追いつかれたとはいえ、キングス相手であることを考えれば上々の戦いぶりと言えるでしょう。ただ、ヒートは相変わらずFT失敗が目立つのが気になるところです。特にオドム。接戦の試合展開だけに、これが最後に命取りにならなければいいのですが……。




そしていよいよ、勝負を決する第4Qが始まりました。第4Qに入ると両チームともFGが決まらなくなり、なかなか得点が入りません。FTを確実に決めていきたいところですが、オドムは相変わらずFTはずすし……胃が痛くなるわ!(苦笑) しかし、ディフェンス面ではヒートらしさが随所に発揮され、点差はわずかながらヒートがリードする展開が続きます。この時点で初めて気付いたのですが、この日のペジャはFGが決まらず得点が伸びていません。最近はどこからうっても決まるんじゃないかというほど絶好調だったペジャにマッチアップしていたのは……エディー! オフェンス面では影が薄かったエディーですが、持ち味のディフェンスでペジャを完全に抑え込んでいました。エディー最高!

↓頼むからはずさないで〜。(汗)




正直に言うと、試合前も、第2Qに最大13点差をつけたときでさえ、ヒートがキングスに勝てるとは思っていませんでした。怪我でウェイドを欠き、最近の試合でも決して好調とは言えない状態だったヒートが、ウエスト首位でしかもウェバーが復帰後絶好調のキングスに勝てる見込みは、限りなくゼロに近いと考えていたのです。しかし……第4Qに入ると、ひょっとするとひょっとするのでは……と思い始めました。全米中継の試合で、ヒートがキングスを破る大波乱……ありうる! これはいける!

ここからはもはや、試合を観戦している1ファンではありません。選手達とともに戦うヒートの一員です。完全に戦闘モードです。自分の応援が足りなかったらヒートは負ける、そんな気分です。この気持ちは、その場にいた人にしか理解できないでしょう。戦闘モードに入っているのは私だけではありません。会場のあちこちから、絶叫にも近い歓声やヤジが飛び、AAA全体が異様とも言える雰囲気に包まれています。

ここからは、ヒートが得点し、キングスが追いつく、その繰り返し。得点が決まるたびに残り時間を確認します。8分……6分……5分30秒……5分……。この日も審判の判定は微妙なものが多く、ついには観客から「Referees suck !!」の大合唱が起こる始末。……しかし、最後の最後で審判のコールが追い風に! オドムがカットインするもキングスのディフェンスに止められフロアに転倒……そこからこぼれたボールをユドニスがフォロー、そしてダンク!! カウントワンスロー!!

この時点で試合残り時間は約3分。今から思えば、このプレイが一進一退だった試合の流れをヒートに大きくたぐり寄せたように思います。この日は無得点に終わったグラントに代わり、第4Qはほぼ出ずっぱりだったユドニスが、試合終盤の重要な場面で見事な働きを見せてくれました。彼ならやってくれると見込んだ私の目に狂いはありませんでした!(笑)

その後、ウェバーがFT2投目をはずすもキングスがオフェンスリバウンド……かと思いきや、キングスのルーズボールファール! ユドニスがインサイドで体を張ってファールを誘い、重要なFTをしっかりと決め、オフェンスでは不調だったエディーも最後に勝負を決めるFTを沈め……そして……




We did it !! Yes !! Weeeeeeeee did it !!!

最終スコアは102−96。全米中継の試合で、ヒートが見事にやってくれました! この勝利の立役者は、何と言ってもラマー・オドムです。30得点(シーズンハイ)、19リバウンド(キャリアハイ)、11アシスト(キャリアハイ・タイ)という獅子奮迅の活躍で、自身8度目のトリプルダブル達成です! とにかくもう、すべてにおいて素晴らしかったですね。あ、FT以外は。(笑) もし30得点、20リバウンド、10アシストを達成していれば、NBA史上7人目の快挙だったそうですが、残念ながら1リバウンド足りませんでした。ちなみに、ヒートの選手がトリプルダブルを達成したのは、1995年1月5日のビリー・オーウェンス以来、実に739試合ぶりだそうです。739試合というのは、1チームのトリプルダブルなしの記録としてはNBA史上最長だとか。

↓歓喜に沸きながらロッカールームに引き上げる選手達。中央ではオドムが勝利インタビューを受けています。




オドム以外では、オルストンが20得点、7リバウンド、7アシスト、ラスール・バトラーが17得点。この2人はバックス戦に続いて見事な活躍でした。特にオルストンは準トリプルダブル級の数字です。また、ユドニスの17得点、7リバウンドという活躍も見逃せません。特に試合終盤は、グラントに代わって試合に出続け、勝負どころで得点、リバウンドに絡む貴重な働きを見せてくれました。

チーム成績では、ヒートのリバウンドが53に対し、キングスは42。ペイント内での得点は、ヒートが44、キングスが28。キングス相手にこの数字というのは驚きです。また、キングスは今季、イーストのチームに対して3敗目(20勝)、マイアミでのアウェイゲームでは通算3勝13敗だそうです。

↓AAAを出発するキングスのチームバス。




試合後、オフィシャルショップで最後の買い物を済ませて外に出たときには、既に辺りは薄暗くなっていました。アリーナの周辺では、勝利の歓喜に沸くファンが歓声をあげています。そんな光景を見ながら、改めて思いました……勝ったんだな、本当に……。こみ上げてくる様々な感情……満足感……達成感……優越感……安堵感……そして、感謝。渡米に当たって様々なアドバイスをいただいた方々、ありがとう。私を温かく迎え入れてくれたマイアミの人々、ありがとう。そして、今日、ヒートに微笑んでくれた勝利の女神よ、ありがとう。


Miami Heat 102-96 Sacramento Kings

Recap / Box Score



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