ラプターズを迎え撃て!



いよいよ生観戦か‥‥そう思うと、いやがうえにも興奮と緊張が高まります。アリーナ前に到着したのは、開場10分前の午後6時20分。試合開始までは1時間以上あるので、アリーナ前で開場を待っている人もまばらです。とりえあず、アリーナ前の階段に座って開場待ち。AAAの正面ゲートの向かい側には、ヒートの旧ホームコートであるマイアミ・アリーナも見えます。

5年前に私が初めてマイアミに観戦に来たときにはまだAAAは完成しておらず、マイアミ・アリーナが使われていました。観戦したのはネッツ戦。ステファン・マーブリーがウルブズからネッツにトレードされた直後で、マーブリーのネッツでのデビュー戦でした。また、当時ネッツのHCだったジョン・カリパリがこの試合の直後に解任されたため、カリパリにとってはネッツでの最後のゲームとなりました。試合の方は、当時のヒートの2大エースだったアロンゾとティムがともに20得点以上を記録して勝利。当時は、ヒートがファイナル進出の最有力候補だった一方で、ネッツは長らく下位に低迷するドアマットチームでした。ヒートがネッツに勝つことは「順当勝ち」だったんですよね、当時は。その後の5年間で、ヒートがファイナル進出はおろかプレイオフ2回戦すら突破できずにドアマットに転落し、一方でネッツが2度もファイナルに進出するイースト屈指の強豪チームに成長するということを、98-99シーズン当時に一体誰が予想できたでしょうか? 時の流れを感じずにはいられません‥‥。

むっ、いかんいかん、感傷にひたっている場合ではありませんでした。ヒートがドアマットチームから再びイーストの強豪へと返り咲くためにも、今季はなんとしてもプレイオフに進出しないといけません。そのためにも、プレイオフ争いのライバルであるラプターズとの試合は絶対に負けられない一戦です。少しでも選手の後押しをできるよう、私も気合いを入れて試合に臨まねば。よっしゃー、やったるぞー!(<何をだ? ヤジか?(笑))

と、感傷的な気分から一気にボルテージを高めたところで(笑)開場に。入り口では係員が観客の持ち物をチェックしていました。2001年のテロ以降、NBAの試合でも持ち物検査がかなり厳しくなっており、AAAではバッグ類の持ち込みを一切禁止しています。今後観戦に行かれる方はご注意ください。私はそのことを聞いていたので、持ち物はカメラ、フィルム、サインペンのみという軽装備で問題なく会場入りできました。



うほっ、ついにAAAに足を踏み入れたぞ! ふーむ、さすがに綺麗ですね、新しい建物だけに。入場ゲートのすぐ内側にはヒートのオフィシャルショップがありましたが、今はすぐにでもシュート練習を見学したいので足早に座席へ。ゲートをくぐると‥‥おお〜、これがAAAのコートかぁ‥‥なにか神聖な場所に入ったような、圧倒されるようでもあり、優しく包み込まれるようでもある、すごく不思議な感覚でした。同時に、自分がAAAのコートのすぐ近くに立っていることへの興奮、1時間後にこの場所で試合が始まるという緊迫感、一人旅でこの場所に辿り着いたという達成感‥‥なんと表現していいのか分かりませんが‥‥鳥肌がたちました。

↓私の席から撮影した写真。(ズーム未使用) ラプターズのベンチ裏の前から9列目、予想以上にいい席でした。これで200ドルなら、ファンにとっては安い買い物でしょう。



試合前のウォームアップは、選手個人のシュート練習→チーム全体での練習、の順に行われますが、選手からサインを貰えるチャンスがあるのは個人のシュート練習の時のみです。ということで、早速ヒート側のセクションに移動‥‥おっ、やってるやってる。この時点で個人のシュート練習に残っていた選手は、ラマー・オドム、カロン・バトラー、ユドニス・ハズレムの3人でした。とりあえず、写真を1枚撮っとこう、パシャ。

↓FTの練習をするカロン。その手前で上着を脱ごうとしているのがオドム、スリーポイントライン付近に立っているのがハズレム。



うーむ、しかしこの場所ではちと遠いなぁ、サインも貰えないし‥‥もう少し前に行ってもいいのかな‥‥でも目の前に係員がいるし(上の写真の手前に写っている黄色い服)‥‥しかもボブ・サップに似てるぞ‥‥などと考えていると、その係員の兄ちゃんに声をかけられました。挙動不審に見えたのかな?(笑)

サップ「席はどこだい?」
アキロー「いや、席はあっちなんですけど、ヒートの選手の写真を撮りたくて‥‥」
サップ「あー、ここからはダメだよ」

ガーン!! せっかくはるばる日本から来たのに、しかも目の前にヒートの選手がいるのに、これ以上近付いちゃダメなのかぁっ!? しかもサインも貰えない‥‥なんてことだ‥‥。

サップ「シュート練習を見学するならゴール裏まで下りていいよ」

へ? なーんだ、いいのか。(笑) 彼は単に、ベンチ裏に近付いてはダメだと言っただけだったようです。AAAでは、アリーナ席のチケットを持っている人はシュート練習中に限り誰でもゴール裏まで下りていけるので、かなり間近で選手を見ることができます。ということで早速ゴール裏に移動‥‥うおー、すぐ目の前にラマーが! カロンが! ユドニスが! で‥‥でかい。至近距離で見ると凄い迫力です。

↓オドムとリバウンドを争っているのはキース・アスキンスAC。



しかし、間もなく3人ともロッカールームの方に入っていってしまったので、結局サインは貰えず。うーん、思いきって声をかけていればサインしてくれたかもしれないな‥‥初めてということもあって遠慮してしまったかなぁ‥‥ちょっと後悔。仕方ないので座席に戻ろうとすると‥‥うぉっ、今度はロッカールームからエディー・ジョーンズが出てきました。よっしゃ、今度こそは、と接近を試みましたが、私が立っていた場所はエディーが出てきた場所とは反対側だったため、エディーの近くに立っていた子供達にブロックされて近付けず‥‥結局、エディーは3〜4人にサインした後、コートサイドにいた人と言葉を交わしてからロッカールームに帰ってしまいました。絶好のチャンスを逃してしまったぁ、無念。

↓コートサイドに座っていた知人らしき人と会話するエディー。(中央) ちなみに、コート最前列の席は一般発売はされていません。ブローカーに頼めば購入は可能かもしれませんが、かなりの値段になりそう‥‥でも一度は最前列で観戦してみたいなぁ。



結局、この日はサインは貰えず、あまりいい写真も撮れないままシュート練習は終了。まぁしかし、あと2試合あるわけだし、次に期待しましょう。ということで、試合までの待ち時間の間に売店でチリドッグを購入。うむぅ、相変わらずでかいですね。しかも、持ち上げるとソースがたれてくる‥‥おかげで、食べ終わるまでに手がネバネバになってしまいました。

トイレで手を洗って戻ってきたら、チーム全体でのシュート練習が始まっていました。おぉー、ボッシュがいるぞ。あの特徴的な顔(笑)はドニエル・マーシャルか。ラプターズとサインしたばかりのディオン・グローバーの姿も‥‥ん?‥‥んん?? 15番がいるんですけど‥‥。天井のスクリーンを見上げると、そこには既に両チームのスターターが発表されていました。そしてラプターズのスターターには「#15 Carter」の文字が。なんと、1ヶ月近く欠場していたカーターがこの日に復帰していたのです。うぅ〜ん‥‥旅行前の「作者の独り言」ではカーターに復帰してほしいと書いたけど、実際に復帰されると‥‥それはそれで困りますねぇ。(笑) カーター抜きのラプターズなら勝てるだろうと楽観視していたんですが、これで勝負の行方が分からなくなってきました。ヒートはウェイドが欠場で、スターターは予想通りレイファー・オルストンでした。

↓国歌斉唱中。しかし、試合開始10分前でこのガラ空きっぷり‥‥ホントに客席は埋まるのか!?



さて、そうこうしているうちに国歌斉唱も終わり、いよいよ両チームのスターターの紹介に。ついに始まるぞ〜!! まずは、場内アナウンサーがラプターズのスターターを適当に紹介。(笑) スターターはミルト・パラシオ、モーリス・ピーターソン、ヴィンス・カーター、ドニエル・マーシャル、クリス・ボッシュの5人。復帰戦となったカーターに対しては、ブーイング8割、歓声2割といった感じでした。それ以外の選手に対してはほぼ全員がブーイング。続いて、場内が暗くなり、ヒートのスターター紹介に。鳴り響くラップミュージック(誰の曲かは分かりませんでした)、スクリーンに映し出されるムービー、そして立ちのぼる炎! うひょー、かっこえぇ〜!! ヒートのスターターはレイファー・オルストン、エディー・ジョーンズ、カロン・バトラー、ラマー・オドム、ブライアン・グラントの5人。両チームの選手が握手をかわし、いよいよティップオフです!



いよいよ試合が始まりました。目の前を走る選手達、アリーナ内に響く「キュッ、キュッ」というバッシュの音、HCが選手達に出す指示‥‥私の目の前で繰り広げられているのは、紛れもなくNBAの試合です。うーん‥‥改めて感動‥‥。ジャパンゲームも観戦しましたが、やはり本場のアリーナで、しかも自分が応援するチームのホームコートで観戦するというのは格別ですね。

試合の方ですが、序盤は完全にヒートのペース。エディーやオドムのシュートがおもしろいように決まり、みるみるうちに点差が二桁に。ラプターズはヒートの厳しいディフェンスに苦しみ、シュートを立続けにミス。おおー、随分好調やのぅ。この日の試合前の時点でヒートは3連敗中でしたが、この日の立ち上がりは攻守ともに絶好調でした。一方、9連敗中のラプターズは攻守ともにちぐはぐな感じで、復帰したカーターもあまり存在感が感じられません。また、ヒートはラプターズ戦で6連勝中らしく、相性の良さもあるのかも。試合開始早々からラプターズがタイムアウトを取るも、ヒート優勢の流れは変わらず、30-15と15点差をつけて第1Qが終了しました。

↓タイムアウト中によそ見するカーター。



よーし、この調子で一気に突き放す‥‥と行きたかったんですが、第2Qに入ってスターターがベンチに下がると、ヒートは一気にペースダウン‥‥。さっきまであんなに簡単に決まっていたシュートが全く入らない‥‥さらにディフェンスもまるで別のチームになったかのような豹変ぶりでスカスカに。あっという間にリードが消滅してしまいました。まぁ、序盤でリードを奪っても終盤で追い付かれる、ということはヒート的にはよくあることですが、まさかこんなにすぐに追い付かれてしまうとは思いませんでしたね。第2Q立ち上がりのメンバーは、私の記憶が確かならば、オルストン、ラスール・バトラー、カロン・バトラー、マリック・アレン、ハズレムの5人。一気に追い付かれ、慌ててスターターをコートに戻すも、ラプターズに傾いた流れは変わらず、逆に3点のリードを許してしまいます。しかし、前半終了間際にヒートも巻き返しをみせ、オルストンのスティールから速攻を決めるなど連続得点を重ねて再びリード。結局、ヒートが2点リードの54-52で前半を終了しました。

↓タイムアウト中に客席をにらみ付ける(?)ローズ。骨折で長期戦線離脱中。この服装にこの目つきの悪さ、どう見てもギャングにしか見えん。




↓ WANTED / DEAD or ALIVE ↓



第2Qで一気に追い付かれた最大の原因は、ディフェンス面にあると思われます。オフェンスが不調のときもディフェンスで踏ん張ってリズムをつかむ、というのがヒートのスタイルですから、ディフェンス面での乱れは命取りになります。この日の第2Qでは、カーター1人に15点を許したうえに、ラプターズのスリーポイントは6本すべて成功。特に、パス回しでディフェンスを崩され、アウトサイドでフリーになったドニエル・マーシャルがスリーを決めるというパターンを立続けに食らっていたのはいただけません。1クオーターで37失点というのもヒートらしからぬ数字です。なんとかリードを奪い返して前半を終了したものの、ディフェンスを立て直せなければ苦戦は必至でしょう。

ハーフタイム中は特にやることもないので、売店で買ってきたコーラを飲みながら席でぼーっとしてました。隣の席では、父親に連れられてきた子供2人が談笑中。見た感じでは、7歳と5歳ってところでしょうか。私のすぐ隣に座っていた子(長男っぽい)は、カロンのレプリカジャージを着用。いい教育を受けているようですねー。(笑) 暇だったので、ちょっと話しかけてみました。

アキロー「やぁ、なかなかおもしろいゲームだね。」
長男「うん。さっきのオルストンのスティールがカッコよかったね。」
アキロー「好きな選手は誰?」
長男「アレン・アイバーソンだよ。彼は凄いんだ。」
アキロー「たしかにグレートな選手だね。ところで君はヒートファンではないの?」
長男「ヒートファンだよ。でも一番好きなのはアイバーソンかな。」
アキロー「ヒートの選手で一番好きなのは誰? カロン・バトラー?」
長男「うーんと‥‥そうだね、カロン・バトラーかな。」

得体のしれない東洋人に話し掛けられても物おじせずに普通に受け答えできるあたりは、さすがアメリカの教育を受けているだけのことはありますね。相手が日本人の子供なら、返事ぐらいはするにしても、なかなかこんな会話はできないだろうなぁと思いました。また、好きな選手がアイバーソンというところに、アイバーソンの全国区の人気と、ヒートの地元人気の弱さを垣間見た気がしました。

↓後半前のシュート練習中に、ぬぼ〜っと立つローレン・ウッズ。それにしてもでかい‥‥。



さて、そうこうしているうちに後半が始まりました。第3Qは、入れられたら入れ返す、という一進一退の展開。ヒートのオフェンスは改善の兆しが見られたものの、相変わらずカーターとマーシャルは好調で止められません。マーシャルがフリーでシュートを打つと、私のすぐ後ろに座っていた客が「あいつをフリーにしてんじゃねぇ!! なにやってんだ!!」と怒鳴っていました。たしかに彼の言う通り、マーシャルをフリーにしてしまう場面が多すぎました。結局、マーシャルはこの日のゲームで、スリーポイント6本を含む24得点をあげました。第3Q終了時点でのスコアは78-78の同点。

↓グラントのダンクが炸裂!



そして、試合はいよいよ勝負を決する第4Qに突入。しかし‥‥お互いにシュートが全く入らない‥‥とにかく入らない‥‥打てども打てども入らない‥‥。両チームともオフェンスの流れが悪く、速攻が全く出ません。その結果、必然的にハーフコート・オフェンスとなりますが、お互いディフェンスはいいのでシュートが決まらない‥‥。特にヒートは、第4Q開始からかなり長い間、無得点だったような気がします。その間にラプターズはFTを確実に決め、じわじわと点差が開いていきます。一方のヒートは、せっかく得たFTをミスする場面が目立ちます。ううぅ、何ともフラストレーションが溜まるゲーム展開です‥‥。

↓万能選手のオドムもFTはあまり得意ではありません。この日は13本中9本成功でしたが、肝心な場面でのFTミスに、私は何度も頭を抱えるハメに‥‥。



気が付けば残り時間は3分そこそこ、ラプターズのリードは5点‥‥嫌な展開です。しかし、ヒートもようやく反撃をみせ、ハズレムのインサイドでのパワープレイやオルストンのスリーなどで追い上げます。うおぉっ! そして残り2分を切った時点でハズレムが相手のファールを誘い、FTを獲得。点差は2点。2本決めればゲームは振り出しに戻ります。まず1本目‥‥成功! Yes! 立ち上がる両チームのベンチ、観客のボルテージも最高潮! 続いて2本目‥‥(↓下の写真)



ガゴンッ‥‥ぐあぁぁっ、痛恨のミス‥‥なんてこった! 残り時間は1分、ラプターズの攻撃、1点差‥‥ここで決められたらかなり痛い‥‥と思ったらっ! なんとエディーが相手のボールをスティール!!! うおぉぉ〜!! 速攻からついに逆転かっ!? リムに向かって走るエディーとそれを追うボッシュ‥‥エディーがレイアップ、体を寄せてくるボッシュ、フロアに倒れ込むエディー!! ‥‥え? ノーファール? すぐさまタイムアウトをコールするエディー‥‥しかし、エディーの体がエンドラインに乗っていたため、タイムアウトは認められずアウト・オブ・バウンズ‥‥そんなバカな‥‥。ただただ絶句するしかありませんでした。ファールがコールされなかったことに激怒し、審判に痛烈なヤジを浴びせる観客達‥‥しかし判定が覆るはずもありません。

その後、残り9秒でカーターがFTを2本確実に決めて3点差に。ラスト・ワンプレイでの奇跡のスリーポイントに賭けるしかありません‥‥。タイムアウト明けの最後のプレイ、ボールはスリーポイント・ラインのやや内側にいるオルストンへ。しかし打てない‥‥時間がない‥‥オルストンがエディーにパス、エディーを取り囲むディフェンス‥‥時間がない、打つしかない!! 態勢を崩しながら最後のショットを放つエディー、ブロックに飛ぶボッシュ‥‥再びフロアに倒れ込むエディー!! ボールはリムに届かず、そして‥‥ノーファール‥‥。あぁ‥‥終わってしまいました。

↓最後のプレイでファールがコールされなかったことに対して激怒するスタン・ヴァンガンディHC。(ちっちゃい方)



勝つチャンスがあっただけに、そのチャンスをみすみす手放してしまったことが悔やまれます。この日の試合後、ヴァンガンディHCとマッキャドゥーACが審判の判定を批判し、NBAから罰金を科されました。たしかに、ヒート側から見れば不可解なコールが多かったと私も感じました。しかし、それは所詮言い訳に過ぎません。第2Q以降は攻守両面でちぐはぐさが目立ったこと、そして重要な局面でのFT失敗とターンオーバー、それが敗因であることは疑いありません。FG成功率はヒート43.6%に対してラプターズ48.6%、FT成功率は同じく71.4%対83.3%。これらの数字の差が、接戦での致命的な差になったということでしょう。プレイオフ争いの直接対決での敗北、ラプターズの9連敗をストップし、自らは4連敗。ヒートにとっては痛恨の敗戦となってしまいました。

その後、AAA内にあるヒートのオフィシャルショップを覗いてみると、店内のTVにはがっくりとうなだれながら会見に応じるヴァンガンディHCの姿が。何を話していたのかは聞き取れませんでしたが、おそらくこの場で審判への批判を口にしていたんでしょう。店内には様々なヒートグッズが置かれていましたが、さすがにこの時は買い物をする気にはなれず‥‥私もヴァンガンディHCと同様、肩を落としてホテルへの帰路についたのでした。


Miami Heat 86-89 Toronto Raptors

Recap / Box Score



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